【書評】「エフゲニー・キーシン自伝」から見える素顔と魅力

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クラシックピアノ界の鬼才、エフゲニー・キーシン。

その演奏に魅了されてきた方なら、一度は手に取りたくなるのが、彼自身の言葉で綴られた自伝です。

今回ご紹介するのは、そんなキーシンの生い立ちや音楽観、そして舞台裏の素顔が垣間見える一冊『エフゲニー・キーシン 自伝』。

初めて読んだのは数年前でしたが、あらためて読み返してみると、やはり深く心に残る内容だったため、感想をまとめることにしました。

キーシンのファンはもちろん、クラシック音楽やピアニストの人生に関心のある方にも、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

今回ご紹介する書籍情報

書名:『エフゲニー・キーシン 自伝』
著者:エフゲニー・キーシン(Evgeny Kissin)
翻訳:森村 里美
出版社:ヤマハミュージックエンタテイメントホールディングス
出版年:2017年

この記事はこんな方にオススメ!
  • エフゲニー・キーシンが好きな方
  • この本を買おうか迷っている方
  • この本でどんな感想を持ったか気になっている方
目次

愛される人間性

キーシンの演奏会に足を運んだ方や、映像でその演奏を観たことのある方はご存知かもしれませんが、舞台上でも非常に謙虚で控えめな立ち振る舞いが印象的なピアニストです。

幼い頃からずば抜けた音楽の才能を示し、神童として注目を集め、若くして華々しいデビューを果たしたキーシン。

その姿からは、まるで遠い世界の人物のような印象を受けるかもしれません。

しかし本書を通して見えてくるのは、決して特別な存在ではなく、悩みや葛藤を抱えながらも誠実に生きる一人の人間としての姿です。

キーシンは、家族や恩師アンナ・カントールをはじめとする周囲の支えに深く感謝しながら、ロシアでユダヤ人として育ち、複雑な背景の中でも真っ直ぐに音楽と向き合ってきました。

自己の信念を大切にし、感謝の気持ちを忘れずに行動するその姿勢には、人間としての芯の強さと優しさが感じられます。

本書を読むことで、キーシンがどのように物事を受け止め、判断し、歩んできたのかを知ることができ、読者の中にも自然と親しみの感情が湧いてくるのではないでしょうか。

キーシンの演奏がもつ深みや輝きは、天賦の才だけでなく、キーシンの人間性とそれを育んだ環境すべてによって形作られている――そんな印象を強く受けました。

キーシンの魅力

本書では、キーシン自身が音楽や演奏に対してどのような考えを抱いてきたか、またそれをどのように表現してきたかについても多く語られています。

キーシンは、常に作曲家の意図を尊重し、その精神を忠実に汲み取ったうえで、独自の音色として表現することを大切にしてきました。

本書を読むと、その姿勢が一貫していることに驚かされます。

演奏スタイルにおいても、過度なアレンジや自己主張に走るのではなく、楽譜に込められたメッセージを丁寧にすくい上げ、聴き手に自然な形で届ける。

その中でなお、美しい音色と表現力がにじみ出てくるのです。

音作りにおける細かなこだわりや、演奏に臨む際の精神状態なども語られており、ステージ上で見られる圧倒的な表現の裏にある繊細な感受性や努力が垣間見えます。

そうした背景を知った上で演奏を聴くと、一音一音がより深く胸に響いてくるように感じられます。

本書は、単なる演奏家の伝記という枠を超え、ピアニストとしての思想や哲学にも触れることができる一冊です♪

才能の塊

キーシンは一般的なピアニストが辿る「国際コンクールを経て名を上げる」という経路とは異なる歩みをしてきました。

幼少期より世界各地でリサイタルを開催し、その類まれな才能によってコンクールに頼らずとも国際的に認知される存在となったのです。

近年のピアノ界では、特にクラシック音楽の世界でプロのピアニストとして生き抜くのは非常に厳しい環境であり、多くの若手音楽家がコンクールでの成功を目指して舞台経験を積む中、キーシンは自身の実力を武器に独自の道を切り拓いてきました。

本書では、キーシンがどのように多くの巨匠たちと交流を深め、豊富な演奏機会を得てきたかも詳述されています。

そうした縁や機会を、自らの努力と才能で引き寄せ、着実に実力を高めてきたことが伝わります。

また、年齢を重ねるにつれ音楽表現の深みが増している様子も描かれており、非常に興味深いです!

キーシンは挑戦を続け、音楽への情熱を失うことなく、活躍を続けていることが本書からよく分かります。

本能のままに音楽を愛し、ファンを大切に思い、ピアノに向かい続けているのです。

まとめ

私がエフゲニー・キーシンを初めて知ったのは、小学生の頃にYouTubeで彼の演奏映像を見た時でした。

イギリスのロイヤルアルバートホールでのリサイタルで披露された、卓越したテクニックと繊細な音色、そして聴衆の熱い拍手に応える彼の姿が強く印象に残っています。

礼儀正しく気取らない態度も、彼の人間性を感じさせるものでした。

これまでプライベートをあまり公にしなかったキーシンについて、本書を通じて彼の考え方や人との接し方、家族や音楽への思いを詳しく知ることができました。

彼の内面に触れる貴重な機会となり、非常に満足です♪

ピアノを趣味として続けていく私にとって、本書はこれからも大切にしていきたい一冊!

キーシンは今後も唯一無二の才能を発揮し、世界中の聴衆に素晴らしい音楽を届け続けることでしょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

実際にキーシンのリサイタルに行った際の感想記事も執筆しています。
演奏の臨場感や会場の雰囲気など、より具体的な体験を知りたい方は以下の記事もぜひご覧ください♪

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