第19回ショパン国際ピアノコンクールの第3次予選が、10月14日から始まりました♪
このブログでは、予備予選・第1次予選・第2次予選のときと同じく、すべての演奏者の感想や印象を綴っていきます。
あくまで個人の感想ではありますが、演奏の魅力や気になったポイントをできるだけ丁寧に記録していくつもりです。
世界最高峰の舞台で繰り広げられる若きピアニストたちの演奏を、ぜひ一緒に楽しんでいただければ嬉しいです。
今回は、10月16日開催の3日目(最終日)の感想です♪
10月15日(水)に公式サイトより発表がありました。
10月15日(水)昼の部の2人目で演奏する予定だったEric LU(アメリカ)は、体調不良により10月16日(木)夜の部4人目(=最終日の最後)に延期になりました。
10月15日(水)は3人から2人に変更、10月16日(木)夜の部は3人から4人に増員となります。
ショパンのマズルカは、単なる民族舞曲の模倣ではなく、ポーランドの魂そのもの。
でも、日本にいる私たちは「マズル」や「クヤヴィヤック」「オベレク」などの踊りを、実際に見たことも踊ったこともほとんどありません。そのリズムの「揺れ」や「呼吸」を、どう感じればいいのかが分からないのです。
ショパンの時代のポーランドでは、マズルカは日常の中にあり、村の広場で、結婚式で、宴の最後に――誰もが足を鳴らして踊り出すような、生活に根ざしたリズム。
ショパンはそれを、ピアノという“都会の楽器”の中に閉じ込めて、祖国への郷愁と誇りを込めたんですよね。
私たちがマズルカを聴くときにできるのは、
リズムの中にある「息づかい」や「心のうねり」を感じようとすること。
完全に理解することはできなくても、“そこに何かある”と感じ取る耳を持つことが、きっと大事なのだと思います。
予備予選:2025年4月23日(水)〜2025年5月4日(日)
予備予選通過者発表:5月6日(火)17時30分(現地10時30分)配信あり
開会記念コンサート:10月2日(木)
1次予選:10月3日(金)〜10月7日(火)
2次予選:10月9日(木)〜10月12日(日)
3次予選:10月14日(火)〜10月16日(木)
本選:10月18日(土)〜10月20日(月)
上記は全て2025年4月23日時点での情報です。
変更となる場合がありますので必ず公式サイトをご参照ください。
この記事を書いている人

アガサ
このブログの運営者及び管理人
3歳からピアノを始め、クラシック音楽歴は30年以上。結婚・出産を経て育児の合間にピアノを再開し、念願のグランドピアノも迎えました。
現在はピアノ教室向けのグラフィックデザイナーとして、全国の先生方をサポートしています。
ピアノとクラシックをこよなく愛する主婦が、音楽やピアノにまつわる情報を気ままに発信中です♪
3日目 昼の部 感想
牛田智大(日本)17:00
使用ピアノ:Steinway & Sons
- ピアノソナタ第3番 ロ短調 Op.58
- 3つのマズルカ Op.56
- 前奏曲 嬰ハ短調 Op.45
- 幻想曲 ヘ短調 Op.49
第3次予選最終日の一人目は牛田くんです!
演奏前に笑顔が見られて、少しホッとしました♪
第2次予選の時は笑顔がなく、演奏後のインタビューも受けなかったので、気持ちが切り替えられたのかな^^
良かったです!
しかもこの日はなんと牛田くんのお誕生日。
バースデー3次予選!おめでとう牛田くん🍰✨
まずは「前奏曲 嬰ハ短調 Op.45」から。
一音一音、なんと美しい響き。
転調する部分も全く違和感がなく自然で、一気に彼の世界観が広がります。
続く「マズルカ Op.56」。
Op.56-1の響きも美しすぎる。温かく深いマズルカで、とても魅力的。
1曲目からうるうるしてしまいました。
Op.56-2は民族的要素が多い曲ですが、心地よいリズム感と柔らかな音色。
Op.56-3は、極上のマズルカ。音の粒ひとつひとつが光っているようでした。
「幻想曲」は、一つ一つ丁寧に物語を読み聞かせてくれているような感覚。
最後のコーダは圧巻。
静寂から暖かく包み込まれるような締めくくりの和音に、心が溶けました。
「ピアノソナタ第3番」。
第1楽章の中間部の美しさ、聡明さ。軽やかなタッチと音色の対比が素敵。
第3楽章はまるでノクターンのように美しく奥深く繊細。
主題部分は、琴線にそっと触れるような優しい音色で、牛田くんの良さが詰まった宝箱のような渾身の第3楽章でした。
第4楽章は、静かな情熱から一気に解き放たれるような展開。
左手の響かせ方も独特で、「ショパンってこんな一面もあるんだよ」と語りかけてくるよう。
演奏後は、控え室に戻る際に笑顔も見られました。
ホッとしました。
第2次予選の時は笑顔が消えていて本当に胸が痛かったので、今回はその笑顔が見られて本当に嬉しかったです。
ファイナルでまたその姿を見られることを願っています。
素晴らしい演奏をありがとう!!
▼ 第1次予選時の感想はこちら!
▼ 第2次予選時の感想はこちら!
Zitong WANG(中国)18:00
使用ピアノ:Shigeru Kawai
- ピアノソナタ第2番 変ロ短調 Op.35
- 3つのマズルカ Op.50
- 華麗なる変奏曲 変ロ長調 Op.12
- ワルツ ホ長調 WN18
- スケルツォ第1番 ロ短調 Op.20-2
次は、圧倒的実力者のZitong WANGさん!
まずは「マズルカ Op.50」から。
マズルカ、うますぎるーーーーーー!!!!!
やっぱり、すごい。
音色のコントロール力、自由自在に音を奏でていますよね。
予備予選から本当に色彩豊かな音楽を聴かせてくれます。
Op.50-3、素敵すぎる。なんてこった。
余韻を残したまま、続く「ピアノソナタ第2番」。
第1楽章から、なんという演奏でしょう…。
マズルカの美しい世界から一転して、激しい渦の中に放り込まれたよう。
苦悩なのか、怒りなのか、悲しみなのか――
もはや感情の境界が溶けてしまったような世界。
第2楽章ではそれがさらに色濃くなり、
第3楽章では、もう“無”の境地。
何もない世界の中で、中間部にふと現れる魔法のような美しい音…。
一音一音が、空から静かに降り注ぐようでした。
「ワルツ ホ長調 WN18」では一転して華やかで軽やか。
「変奏曲」ではさらに多彩な音色を聴かせてくれました。
そしてラストの「スケルツォ第1番」。
圧巻。
予備予選から第2次予選まで素晴らしい演奏でしたが、この第3次予選はさらにパワーアップしていたように感じます。
心から魅了される演奏でした。
素晴らしかった!!!
▼ 予備予選時の感想はこちら!
▼ 第1次予選時の感想はこちら!
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Yifan WU(中国)19:25
使用ピアノ:Steinway & Sons
- ピアノソナタ第3番 ロ短調 Op.58
- 3つのマズルカ Op.56
- バラード第2番 ヘ長調 Op.38
- 子守歌 変ニ長調 Op.57
「子守歌」から始まりましたね。
なんて美しく穏やかな音色。柔らかく包み込むような響きで、会場の空気がすっと静まり返りました。
ショパンの優しい旋律の中に、彼自身の誠実さや繊細さが感じられました。
続く「マズルカ Op.56」も、とても詩的で美しい。
一音一音がまるで詩の言葉のようで、旋律に息づくリズムの揺らぎやニュアンスがとても自然。
豊かな音色の変化と、心地よいテンポ感。
マズルカ特有の“郷愁”のようなものを、まだ16歳の彼がこんなにも深く表現できるなんて本当に驚きです。
そして「ピアノソナタ第3番」。
この曲はショパン晩年の名作で、技術的にも表現的にも非常に難しい作品ですが、彼はそれをまるで物語を語るように、一つ一つの音に意味を込めて演奏していました。
音の構築がしっかりしていて、響きの層もとても美しい。
16歳とは本当に思えない深みと表現力でした。
それでいて、ところどころに若々しさや瑞々しさも感じられて、成熟した解釈の中に少しの初々しさが混ざる、そのバランスがとても魅力的でした。
不思議な透明感とエネルギーを併せ持つ、印象的な演奏だったと思います。
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2日目 夜の部 感想
William YANG(アメリカ)0:00
使用ピアノ:Steinway & Sons
- ピアノソナタ第3番 ロ短調 Op.58
- 4つのマズルカ Op.33
- スケルツォ第4番 ホ長調 Op.54
「スケルツォ第4番」から始まりました。
安定した実力と抜群のテクニック。相変わらず素晴らしい演奏です。
彼の奏でる音はどこまでも透明で、キラキラと輝いていて、まるで光をまとっているかのよう。
音の粒立ちが本当に美しく、どんな激しいパッセージの中でも濁らないのが印象的です。
続く「マズルカ Op.33」では、一転して個性豊かな世界を描き出します。
リズムの揺れや間の取り方がとても自然で、まるで歌っているよう。
彼の音楽って本当に不思議で、ピアノという楽器から出ているのに、人の声にも、あるいは弦楽器や管楽器のようにも聞こえる瞬間があるんです。
それほどまでに多彩な響きを生み出す感性の豊かさを感じました。
「ピアノソナタ第3番」では、さらにスケールの大きな演奏を聴かせてくれました。
特に第4楽章はかなりテンポを速めての挑戦的な演奏。
それでも全く崩れず、彼の確かなテクニックと音楽性の高さが光っていました。
ただ速いだけではなく、しっかりと構築されたリズムとフレーズ。
最後まで緊張感を保ちつつ、堂々と駆け抜けた圧巻のソナタでした。
すばらしいーーーー!!!!
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Piotr ALEXEWICZ(ポーランド)1:00
使用ピアノ:Sigeru Kawai
- ピアノソナタ第2番 変ロ短調 Op.35
- 4つのマズルカ Op.41
- 前奏曲 嬰ハ短調 Op.45
- アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 変ホ長調 Op.22
1曲目は「前奏曲 嬰ハ短調 Op.45」。
深く憂いを帯びた、ツヤのある響き。まさに自然体のショパン。
そこから「ピアノソナタ第2番」へ。
冒頭から勢いのある演奏で、音色もとても美しい。
大雑把さが一切なく、一つひとつの音を丁寧に紡いでいく感じ。
第1楽章と第2楽章では、迫り来るような感情の高まりが見事に描かれていて、
その流れが途切れないので、自然に音楽に身を委ねられました。
そして第3楽章。
まるで嘆きの声のようでもあり、救いを求める声のようでもあり……あるいは、遠い過去を懐かしむようにも聞こえる。
理由もなく涙がこぼれるほどの美しさ。
第3次予選の1日目か2日目の感想でも書きましたが、「ピアノソナタ第2番」の明暗を分けるのは第3楽章だと思っています。
Piotr ALEXEWICZさんの第3楽章は、他の誰とも違う独自の解釈で、それがとても自然に心に届いてきました。
こういう音楽、大好きです。
続く「マズルカ Op.41」では、さすがの音色。
もうポーランドの方のマズルカにどうこう言う必要なんてないと思いますが、これだけは言わせてほしい。
素晴らしい!!!(涙)
マズルカってこういう音楽なんだな、と感じさせてくれるような、堂々たるマズルカで圧巻でした。
ショパンもきっと喜んでいるはず。
彼のマズルカ、全曲聴いてみたいくらいです。
最後の「アンスピ」も、情景豊かで、音色がキラキラと魔法のように舞っていました。
さすがの演奏。
本当に素晴らしい時間をありがとう!
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Kevin CHEN(カナダ)2:25
使用ピアノ:Steinway & Sons
- ピアノソナタ第3番 ロ短調 Op.58
- 4つのマズルカ Op.41
- バラード第4番 ヘ短調 Op.52
待ちに待ったKevin CHENさんの登場です!!
ステージに上がる前、いつものように静かにじっと待っている姿が印象的。
その落ち着きようと集中力には毎回驚かされます。
まずは「マズルカ Op.41」から。
彼の素晴らしい音楽性がぎっしり詰まったマズルカ。
豊かで伸びやかな音色、自由なリズム、そして粒立ちのはっきりとした明瞭な響き。
音の一粒一粒が輝いていて、彼の音色の多彩さには本当に魅了されます。
マズルカの余韻を残したまま、続いて「バラード第4番」。
繊細な音なのに、はっきりとクリアに届いてくる音色。
なんという才能でしょう。
そこにあるのは、まさに“人間味のある音楽”。
Kevinさんというと、どうしても卓越したテクニックに注目されがちですが、彼の真の魅力はそれだけではありません。
人間の熱情、謙虚さ、そして時に見せる弱さや葛藤。
それらすべてを音で体現しているような、不思議で心に沁みる演奏。
コーダに向かって一気に畳みかける流れは圧巻でした。
そして「ピアノソナタ第3番」。
第1楽章から感じる“人間の力”。
中間部の表現が本当に素晴らしく、第2次予選では圧倒的なテクニックを見せた彼が、この第3次予選ではまるで別人のように、豊かな歌心を聴かせてくれました。
泣きました。本当に。
第2楽章では、音がころころと踊るように輝いていて、第3楽章では、呼吸のある自然な流れの中でたっぷりと歌い上げる。
そこにあるのは、技巧ではなく“人の心”。
彼は決して技巧だけのピアニストではない。
こんなにも人間味あふれる演奏ができるなんて!と、素晴らしい、心震えるステージでした。
▼ 第1次予選時の感想はこちら!
▼ 第2次予選時の感想はこちら!
Eric LU(アメリカ)3:20 [2日目から移動]
使用ピアノ:FAZIOLI
- ピアノソナタ第3番 ロ短調 Op.58
- 3つのマズルカ Op.56
- 舟歌 嬰ヘ長調 Op.60
- ポロネーズ 変ロ長調 Op.71-2
2日目から最後に順番が延期になったEric LUさんの登場です。
体調不良と言われていましたが、どうやら指の不調だったと言う話もありますね。
右手は第1次予選の時もテーピングをしていましたが、今回も同じようにテーピングされていましたね。
無事に出場できてホッとしました。
1曲目は「舟歌」。
たっぷりとした余白、そしてメランコリックで深みのある音色。
静かに、しかし確かな存在感で始まりました。
続く「ポロネーズ 変ロ長調 Op.71-2」。
この没後出版の作品をあえて選曲した理由がとても気になります。
軽やかでリズミカル、それでいて多彩な音色で聴かせてくれました。
3曲目の「マズルカ Op.56」では、哀愁を帯びた音色の中にリズムの躍動を感じる素晴らしい演奏。
彼らしい音楽性が光っていました。
そして「ピアノソナタ第3番」。
……やっぱり私は、Eric LUさんの弾くピアノソナタが大好きです。
第2次予選の「ソナタ第2番」も圧巻でしたが、今回の「第3番」も格別でした。
第1楽章から、人間の中にある“光と闇”がせめぎ合うような音楽。
力強い本能の音と、善なる優しさが見事に融合しています。
中間部では、あまりの美しさに自然と涙がこぼれました。
なぜ彼は、あの絶望のような音色も、包み込むような温かさも、どちらも自在に操れるのでしょう。
本当に不思議で、尊い。
第2楽章は、まさに音楽性の極み。
第3楽章は、深く抒情的で、心の奥に静かに染み入る響き。
そして第4楽章。熱情が迸る。
途中で電話の着信音が鳴ってしまうハプニングもありましたが、そんなものすぐに忘れてしまうほど、彼の音楽が再び会場を包み込みました。
指の不調もあって本調子ではなかったのかもしれません。
それでも、ここまで魂を込めた演奏を聴かせてくれたことが、ただ嬉しくてたまりません。
もう言葉はいりません。
ショパンの激情なのか、Eric LUの激情なのか。
その境界が溶けてしまうような、嘆きと祈りの入り混じった音楽。
こんなに成熟したソナタを再び彼から聴けるなんて。
今大会に再び戻ってきてくれて、本当にありがとう。
心の底から、ありがとう。
▼ 第1次予選時の感想はこちら!
▼ 第2次予選時の感想はこちら!
まとめ
第3次予選の最終日、3日目は7名の方々が演奏されました。
素晴らしい演奏者に、まずは盛大な拍手を♪
最終日3日目でアガサが気になった方々は、以下の 名です!
- 牛田智大(日本)
- Zitong WANG(中国)
- William YANG(アメリカ)
- Kevin CHEN(カナダ)
- Eric LU(アメリカ)
いや、もう本当に第3次予選になるとみなさん、素晴らしすぎて。
毎度言ってますがここから半数に絞られるなんて。
もはやあまり考えたくない。
残すは、結果発表の後、1日空けてファイナルです。
(ショパンの命日である10月17日はショパン没後176周年記念イベントが行われます^^)
一体どうなるんでしょうか。もうドキドキが止まりません。
残りわずかなショパンコンクール、楽しんでいきましょう!
最後までご覧いただき、ありがとうございました♪

