さぁ、ショパン国際ピアノコンクールの予備予選が終わり興奮も冷めやらぬ中、次はエリザベート王妃国際コンクール2025(以下:エリコン)のピアノ部門が開催されましたね。

この記事を書いている現時点の段階では、ファイナルが終了し結果待ちの状態です!
第1次予選から感想を綴ろうと思っていたのですが、ショパコンの予備予選全員分の感想を綴るのが、まぁまぁ大変だったので(笑)、今回のエリコンはファイナルの感想だけ綴っていこうと思います!
ご自身の感想と照らし合わせてご覧いただくと、楽しんでいただけるかと思います^^
また、最終結果が出次第、エリコン全体の感想などまとめて投稿しようかと思っています♪
ご興味のある方はまた覗きに来てくださると嬉しいです^^
この記事を書いている人


アガサ
このブログの運営者及び管理人
3歳からピアノを始め、クラシック音楽歴は30年以上。結婚・出産を経て育児の合間にピアノを再開し、念願のグランドピアノも迎えました。
現在はピアノ教室向けのグラフィックデザイナーとして、全国の先生方をサポートしています。
ピアノとクラシックをこよなく愛する主婦が、音楽やピアノにまつわる情報を気ままに発信中です♪
- エリザベート王妃国際コンクールの感想を見たい方
- エリザベート王妃国際コンクールが気になる方
エリコン2025の課題曲をおさらい


まずは、エリコンの過酷さを一旦おさらいしていきましょう。
他の国際ピアノコンクールと比べても、非常に厳しい戦いとなるその理由を、以下でご説明していきます。
第1次予選(5月5日〜5月10日)
参加者は60名。約25分間の演奏で、課題曲は以下の3つ。
- 古典派ソナタ(ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン※第18番まで)から第1楽章
- 自由に選んだ曲
- エチュード4曲(ショパン1曲、リスト1曲、リゲティ1曲+その他1曲)
ただし、演奏曲は事前提出した中から審査員が選び、本番の1時間前に知らされるというハードルの高さ!
セミファイナル(5月12日〜5月17日)
24名が進出。リサイタルとコンチェルトの2本立てで行われ、演奏日は別々。
- リサイタル:約40分
- コンクールのための新曲(Ana Sokolovic作曲 約5分)
- 自分で組んだ2種類のプログラム(各30分以内)から1つ(どちらを弾くかは前日に審査員から通達される)
- ※ 1次予選で弾いた曲は使えない
- コンチェルト:約30分(モーツァルトのピアノ協奏曲の5曲の中から1曲選択し演奏)
- ※カデンツァは自作OK!
- オーケストラ共演は、ヴァハン・マルディロシアン指揮ワロニー王立室内管弦楽団。
- 前日にオケ合わせリハーサルがあり、当日にはゲネプロ(バランス・リハーサル)も実施。
これまた前日に知らされるシステム・・・。
コンチェルトもリサイタルも、とにかく短期間での適応力と仕上げ力が勝負。



本番に強い人が生き残る過酷なセミファイナル!
ファイナル
12名が進出。1日2人ずつのペースで本番が行われる。
内容は以下の通り。
- ファイナリストは、2人ずつベルギーのミュージック・チャペルに到着し、各自1週間缶詰状態で滞在
- 到着したその日に、以下の「①新作作品」の楽譜が手渡される(←初見)
- 滞在中は、運営関係者以外との連絡禁止!
- そして滞在7日目に本番。1週間で新曲&既存協奏曲を仕上げるという超過酷スケジュール
- 新作協奏曲(10~15分)
Kris Defoort作曲「Music for the Heart」
※このコンクールのために書き下ろされた、ピアノと管弦楽のための作品 - 自分で選んだ協奏曲
出場者が自由に選んだピアノ協奏曲を披露。
指揮は大野和士、共演はブリュッセル・フィルハーモニー管弦楽団という超一流の布陣!



精神力・集中力・表現力のすべてが試される、究極のファイナルです。
ファイナル1日目の感想


吉見友貴(日本)
- Kris Defoort:Music for the Heart(新曲課題)
- プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番 ハ長調 Op.26
Kris Defoort作曲「Music for the Heart」、吉見さんが記念すべき初演!
そして、トップバッターとは思えないほど落ち着いた佇まいに感服。
あの難曲を、エネルギッシュかつ知的に、構造を明確にしながらも勢いよく弾き切った姿は本当に圧巻でした。
途中、客席でスマホが鳴ってしまったのが残念(;;)
しかも静かなところだったので、吉見さんの表情にも「うっ」とした雰囲気が見えて、ちょっと心が痛くなりました。
でも、そこから一切崩れずに最後まで集中を切らさなかったのはお見事。
プロ意識の高さが光っていましたよね♪
吉見さん、ブラボーでした!お疲れ様でした^^
Nathalia Milstein(フランス)
- Kris Defoort:Music for the Heart(新曲課題)
- ブラームス:ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 Op.83
演奏は、しっかりとした意思を持った堅実なアプローチ。
ただ、正直に言うと、第1楽章の中間部あたりで少し間延びしているように感じたところもありました。
あの部分、個人的にすごく好きな箇所なので、もっと迫力があると嬉しかった…!(少ないこの語彙力で伝わる?笑)
ブラームスのこの曲はどうしても「男性が力強く弾くイメージ」が自分の中に強くあって、そこからすると意外な印象もありましたが、最後までしっかり楽しめました♪
ファイナル2日目の感想


Rachel Breen(アメリカ)
- Kris Defoort:Music for the Heart(新曲課題)
- ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番 ニ短調 Op.30
ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番といえば、アガサが愛してやまない1曲!(愛が深い)
そんな名曲での登場だったのですが、第1楽章でちょっと危ない瞬間が。
(動画8分45秒あたり〜)おそらく暗譜が飛んでしまったのか、一瞬ヒヤッとしましたね。
でも、そこから指揮者と息を合わせてしっかり持ち直して最後までつなぎ切ったのはさすがです!
このファイナルは上述した通り、超過酷スケジュール。
そりゃ、体調面でもメンタル面でもキツくなるのも当然ですよね・・・。本当にすごいです。
第1楽章のカデンツァは大カデンツァを選択されていましたね。
全楽章とおして旋律をとても丁寧に美しく歌い上げるところが印象的で、うっとりするような瞬間もたくさん。
もしかしたらご本人としては納得いかない部分があったかもしれませんが、聴いている側にはしっかりと「美しい演奏」として届いていました!
Valere Burnon(ベルギー)
- Kris Defoort:Music for the Heart(新曲課題)
- ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番 ニ短調 Op.30
Rachel Breenさんに続いて、同じくラフマニノフのピアノ協奏曲第3番を選んだValère Burnonさん。
同じ日に2度も聴けるなんて、また違った面白さがあって良かったです!
彼も第1楽章では大カデンツァを選択していましたね。
冒頭から安定感があり、ルバートの加減も巧みで、全体のバランスがとても良い印象。
特に、第3楽章のコーダに入ってからの畳みかけるような展開は圧巻。
フィナーレには鳥肌が立ちっぱなしでした。



私の体は、個人的に素晴らしいと思い、尚且つとても感銘を受ける演奏の場合は、自動的に鳥肌が立つ仕組みになっています。(どんな仕組み。笑)
演奏後は、会場内が総立ちのスタンディングオベーションに包まれましたね〜♪
地元ベルギーのピアニストということもあって、客席の熱気はひときわ高まっていたように思います。
素晴らしい演奏が聞けて、アガサは感無量です;;
ありがとう、Valere Burnonさん!
ファイナル3日目の感想


Nikola Meeuwsen(オランダ)
- Kris Defoort:Music for the Heart(新曲課題)
- プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第2番 ト短調 Op.16
プロコフィエフのピアノ協奏曲第2番としては、良い意味で少し意外性のある演奏。
鋭さや攻撃的な響きよりも、全体的にしなやかで端正にまとめられていて、プロコフィエフの新たな一面を見せてくれたように思います。
「こんな表現の仕方もあるのか」と、ハッとさせられる場面も多くありました^^
私は普段、第3番のほうをよく聴いているのですが、この演奏を聴いて第2番の魅力にも改めて気づけて嬉しくなっちゃいました。
Sergey Tanin(ロシア)
- Kris Defoort:Music for the Heart(新曲課題)
- プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番 ハ長調 Op.26
「ロシア!」という王道スタイルの演奏で、どっしりとした安定感が印象的でした。
音の芯がしっかりしていて、タッチも力強く、聴いていて安心感のある仕上がりだったと思います。
奇をてらった表現や大胆な個性を前に出すというよりは、作品そのものを真っすぐに、誠実に届けるタイプの演奏でした。
全体的に完成度が高く、さすがだなと感じました。
ファイナル4日目の感想


Arthur Hinnewinkel(フランス)
- Kris Defoort:Music for the Heart(新曲課題)
- シューマン:ピアノ協奏曲 イ短調 Op.54
やっと王道ロマン派の協奏曲が登場して、少しホッとしました。(笑)
ラフマニノフ、プロコフィエフ、ブラームスと重厚なプログラムが続いていた中で、シューマンのしなやかな世界がとても新鮮に感じられました。
改めて、選曲や演奏順って結構審査にも影響するんだろうなぁ・・・と実感。
そして何より、シューマンの音楽ってやっぱりいいな…としみじみ思わせてくれる演奏でした。
叙情的な柔らかい音から、内面に迫るような深い響きまで、音色の幅が本当に豊かで、聴いていて心が動かされました。
作品への共感とコントロール力のバランスが見事で、素晴らしいひとときを味わえました。
Jiaxin Min(中国)
- Kris Defoort:Music for the Heart(新曲課題)
- プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番 ハ長調 Op.26
率直に言って、これは本当に“やばかった”です。もちろん、最高の意味で。
熱く燃えるような音色のすぐ裏に、繊細で美しい響きが同居していて、その対比がなんとも言えず魅力的でした。
プロコフィエフらしい鋭さや疾走感もありつつ、自分の個性や音楽観もしっかりと感じられる演奏で、最後のコーダに向けての畳みかけには鳥肌が立ちました。圧巻。
オケもこれまでの演奏の中で一番ノリにノっていた気がします。
1次予選の時からずっと気になっていた方だったので、ファイナルでこのプロコフィエフを聴けたのは感無量;;
地元ベルギーの出身ではないにもかかわらず、会場からスタンディングオベーションが起こったのも納得の素晴らしさでした。
本当に心に残る演奏でした。
ファイナル5日目の感想


桑原志織(日本)
- Kris Defoort:Music for the Heart(新曲課題)
- ブラームス:ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 Op.83
力強く、堂々としたブラームスでした。出だしからラストまで集中力が途切れることなく、どの瞬間も安定した演奏で圧倒されました。
重厚な作品をしっかり支えきる技術と精神力、そして音楽への深い共感が伝わってくるような演奏だったと思います。
ブラームスの強さだけでなく、内に秘めた繊細さも時折感じられて、作品の奥行きを改めて実感しました。
10月からのショパンコンクールにも予備予選免除で出場予定ですので、また桑原さんの演奏を聴けるのがとても楽しみです!
Mirabelle Kajenjeri(フランス)
- Kris Defoort:Music for the Heart(新曲課題)
- プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番 ハ長調 Op.26
演奏全体からは、音楽にとらわれすぎない自由な感覚が伝わってきました。
型にはまらず、自分らしさをしっかり表現しているのが印象的。
ダイナミックな音の動きやエネルギーも素晴らしく、聴いていて思わず「ブラボー!」と言いたくなるような迫力がありました。
彼女の演奏後も、スタンディングオベーション!でしたね^^
自由な発想と力強さがうまく融合した、とても魅力的な演奏でした♪
ファイナル6日目の感想


亀井聖矢(日本)
- Kris Defoort:Music for the Heart(新曲課題)
- サン・サーンス:ピアノ協奏曲第5番 ヘ長調 Op.103
待ちに待った亀井くんの登場!
アガサがずっと応援しているピアニストの一人で、リアルタイムで聴くために夜9時に就寝して、朝3時にアラームをかけて備えました。(現在、演奏を聴き終わってすぐに感想を綴っております。まだ外暗いよ!笑)


新曲課題では、他の出場者とは一線を画す独特の解釈を聴かせてくれました。
何が“正解”なのか分からない世界だからこそ、こういうアプローチがあってもいいし、むしろ、静けさの中に何かが燃えているような彼の演奏はとても印象的でした。(少し贔屓目かもしれませんが…笑)
そして、サン=サーンスのピアノ協奏曲第5番は、もはや彼の“相棒”のようなレパートリー。
第1楽章では、まだ少し緊張があったのか少しずつエンジンをかけているような状態。
第2楽章からは、ひたすらに安定した演奏で、第3楽章に入ってからの畳みかけには思わず引き込まれましたね。さすがです。
演奏直後の彼の笑顔を見て、こちらもホッとした気持ちに・・・( ; ; )
亀井くんに限らず、ファイナリストの皆さんが一週間缶詰状態になり新曲課題や自由選曲のピアノ協奏曲と向き合ったわけです。(もちろん第1次予選から含めて、信じられないような過酷さ。)
きっと、私たちからは言葉にできないほどの準備と大変な苦労があったことでしょう。
ショパン国際ピアノコンクールでは惜しくも予備予選を通過できなかったけれど、それはあくまでショパンという枠の中でのこと。
リストやサン=サーンスのような様々な作曲家を演奏してこそ、彼のカラフルな音楽性が一層輝くのではないかと、今回の演奏を通して強く感じました。
1次からずっと見てきて、このファイナルのラスト、そして会場総立ちのスタンディングオベーション。
本当に感動しました。泣けました。
心から「お疲れさまでした」と伝えたいです!



そして、素晴らしい演奏を聞かせてくれてありがとう。亀井くん!(涙)
久末航(日本)
- Kris Defoort:Music for the Heart(新曲課題)
- ブラームス:ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 Op.83
新曲課題がとても完成度の高い演奏で、本当に素晴らしかったです。
今まで聴いた中で、個人的にはいちばん好きな解釈でした。
「これが完成形なのでは?」と思ってしまうほどの説得力。
新曲って、当然ながら誰かのお手本を聴けるわけでもなく、他の出場者の演奏もリアルタイムでは聴けない状況ですよね(缶詰状態とのことなので…)。
そんな中で、あそこまで仕上げてきた久末さんには脱帽です。
そしてブラームスのピアノ協奏曲第2番。
これまでに何人かの演奏を聴いてきましたが、自分が思い描いていた“理想のブラームス像”に一番近い演奏だったように感じました。
全楽章にわたって安定感があり、音色のコントロールや構成力も本当にお見事でした。
オケとの一体感も非常に良かった!
ファイナリストの中で最後の演奏というプレッシャーもきっとあったと思いますが、それを感じさせない堂々たる演奏!
本当にお疲れさまでした。
そして、感無量の演奏をありがとうございました!
まとめ


以上、全12名のファイナリストそれぞれの演奏について、感じたことを綴ってきました!
どの演奏にも、それぞれの個性と想いが溢れていて、ただただ圧倒される、そして幸せな時間でした♪
結果がどうであれ、ここまで辿り着いた12人全員に、心からの拍手を送りたいです。
この素晴らしいファイナルを共有してくれた全てのピアニストたちに、ありがとう。そしてお疲れさまでした!
最終結果が発表され次第、また改めて全体のまとめも投稿する予定です^^