趣味でピアノを楽しむ皆さんへ送る「作曲家や楽曲についてより深く知ろうシリーズ」の第4弾です♪
第1弾
第2弾
第3弾
趣味でクラシックピアノを弾いていく上で、作曲家や楽曲について今一度確認して、演奏の表現力向上や楽譜を読み解く力を付けよう!という当ブログのシリーズです♪
今回は、「管弦楽の魔術師」モーリス・ラヴェルについて取り上げます♪
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アガサ
このブログの運営者及び管理人
3歳からピアノを始め、クラシック音楽歴は30年以上。結婚・出産を経て育児の合間にピアノを再開し、念願のグランドピアノも迎えました。
現在はピアノ教室向けのグラフィックデザイナーとして、全国の先生方をサポートしています。
ピアノとクラシックをこよなく愛する主婦が、音楽やピアノにまつわる情報を気ままに発信中です♪
- ラヴェルの生涯や人物像について知りたい方
- フランス近代音楽や印象主義音楽に興味がある方
- ラヴェルの代表的なピアノ曲や管弦楽作品を聴いてみたい初心者・中級者ピアノ愛好家
ラヴェルの簡単年表

では、ラヴェルの生涯を年表にしましたので見てみましょう♪
以下の年表は、大まかな事柄のみを8個のポイントに絞り記載しています。
フランス南西部のシブールに生まれる

スイス系の父とバスク系の母のもとに誕生。幼少期から音楽に親しみ、7歳でピアノを始める。
パリ音楽院に入学、フォーレらに師事

入退学を繰り返しながらも作曲・ピアノ・対位法などを学ぶ。革新的若い芸術家と行動を共にし、影響を強く受ける。
ローマ賞落選をめぐり論争に

名誉あるローマ賞に何度も挑戦するも落選。音楽界の保守性への批判が巻き起こり、“ラヴェル事件”と呼ばれる。
「水の戯れ」「鏡」「夜のガスパール」などピアノ作品で注目される

緻密な構成と斬新な和声で高く評価され、フランス近代音楽の旗手として頭角を現す。
オーケストラや室内楽の名作を多数発表

「ダフニスとクロエ」「マ・メール・ロワ」「クープランの墓」などを発表。第一次世界大戦では従軍も経験。
アメリカ演奏旅行、ガーシュウィンらと交流

ボストン交響楽団などと共演し、大成功を収める。ジャズやアメリカ文化にも強い関心を抱く。
脳疾患により創作活動が困難に

言語や運動に支障をきたす病にかかり、次第に作曲ができなくなる。最後の大作は「左手のためのピアノ協奏曲」。
脳手術後に容体が悪化し死去

長年の病を治すため手術を受けるが、意識が戻らずそのまま死去。静かな死が惜しまれた。
いかがでしょうか。
モーリス・ラヴェルは、「ボレロ」や「亡き王女のためのパヴァーヌ」などで知られるフランス近代音楽の巨匠ですが、その歩みは決して華やか一辺倒ではありません。
幼い頃から音楽に親しみ、フォーレに学んだラヴェルは、精緻で構築的な作品を通じて独自の世界を築いていきました。
しかしその裏には、ローマ賞落選をめぐる論争や、創作への徹底したこだわり、そして孤高とも言える姿勢がありました。
ジャズや異文化に興味を持ち、常に新しい響きを追い求めた一方で、他者との深い関係をあえて持たず、内向的な静けさのなかに身を置いていたラヴェル。
晩年には病により筆を絶たれるものの、その作品群は今も鮮烈な個性を放ち続けています。

ラヴェルの作品に耳を傾けるとき、彼の静かなる情熱や、自らに課した厳格な美意識を感じ取りながら、その音の粒に込められた思想や詩情を味わっていただけたらと思います♪
ラヴェルについて描かれているおすすめの本です♪
より深くラヴェルの人生を知りたい!という場合はぜひご覧ください^^
全音から出ている、人気の作曲家シリーズで読みやすいです!
ラヴェルの作品から様々な事柄を紐解いていく本です!
ラヴェルの人物像


さて、ラヴェルは上述の年表の通り、1937年に62歳でその生涯を終えました。
同時代のドビュッシーと並び称されることの多いラヴェルは、印象主義に分類されながらも独自の作風を追求し続けた作曲家です。
構造へのこだわりと、色彩豊かなオーケストレーション、そして異国情緒やジャズなど多彩な要素を取り入れる柔軟さを兼ね備えていました。
寡黙で几帳面、社交よりも創作に心を傾けたラヴェルの人物像とは――。
以下で、その人物像に迫っていきましょう♪
性格
モーリス・ラヴェルは、知的で繊細、そして非常に内向的な性格の持ち主だったとされています。
外見は小柄で、神経質そうな印象を与えたとも言われますが、その内面には揺るぎない芸術観と鋭い感性がありました。
言葉少なで社交的とは言えなかったものの、非常に誠実で真面目な人物であり、音楽に対する探究心はきわめて深かったようです。



ラヴェルの音楽に触れるたび、その冷静さと緻密さの中に、ふと人間味や感情の揺らぎがにじむ瞬間があることに魅力を感じるんですよね。
理性的でありながら、決して冷たくはない──それがラヴェルという人の音楽と人柄を象徴しているようにも思えます。
ラヴェルは美意識が非常に高く、服装や身なりにも気を配っていたそうで、いつも洗練された身だしなみで人前に現れたと伝えられています。
無駄を排し、どこまでも「完成度」を追求する姿勢は、彼の作曲スタイルにもそのまま表れているといえるでしょう。
また、ラヴェルは動物好きでも知られ、特に猫をこよなく愛していました♪
自宅では複数の猫を飼っており、猫たちに対して「大佐」「総督」など階級名のようなニックネームをつけて呼んでいたという、ちょっとユーモラスなエピソードも残っています!(なんて可愛いの。笑)
このあたりも、ラヴェルの意外な一面として親しみを感じずにはいられませんよね^^
交友関係
ラヴェルは、決して多弁ではなく内向的な性格であったため、広く浅い人付き合いを好むタイプではありませんでした。
しかし、音楽家としての共感を覚えた人物とは深く信頼し合い、誠実な関係を築いています。
最も有名なのが、ガブリエル・フォーレとの師弟関係です。
フォーレはラヴェルがパリ音楽院で師事した作曲家であり、ラヴェルの才能を早くから認め、温かく見守り続けました。
ラヴェルもまた、フォーレの繊細で洗練された音楽に強い敬意を抱いており、終生その影響を受け続けました。
フォーレの楽曲はコチラで取り上げています♪


また、クラシックの枠にとどまらず、文学者や画家など、幅広い芸術家との交流も特徴的です。
特に詩人のステファヌ・マラルメや、象徴派の文学との親和性は高く、彼の歌曲作品やバレエ音楽にその影響が色濃く見られます。
音楽家としては、エリック・サティとの関係も興味深いものがあります。
サティはパリの前衛的な音楽サークル「アパッシュ」に参加していたラヴェルと初期には交流がありましたが、次第に路線の違いが明確になり、後にはやや距離を置くようになったとも伝えられます。
また、ドビュッシーとの関係もよく話題にされます。
音楽的には共通点も多く、「印象主義音楽の双璧」と並び称されますが、実際には互いに強いライバル意識を持っていたようです。
ドビュッシーの方が数歳年上でありながら、ラヴェルの台頭にやや不快感を示すこともあったようで、両者の関係は必ずしも親密ではありませんでした。
それでも、お互いの音楽には一目置いていたとも言われており、その緊張感がフランス近代音楽を前進させた一因とも考えられます。
晩年のラヴェルは、戦争による心身の負担や病の進行もあり、徐々に人付き合いを減らしていきます。
しかし、音楽家のマルグリット・ロン(ピアニスト)や、弟子のローラン=マニュエルらには心を許していたようです。
彼を取り巻く人々は、ラヴェルの沈黙の背後にある深い感受性と、誠実な芸術観に心を動かされたのではないでしょうか。
ラヴェルの名曲


次に、必ず1度は聞いておくべきラヴェルの名曲をご紹介します!
以下の4つの作品群に分けましたので順番にそれぞれご紹介していきますね^^
ピアノ曲
ここでは、リストが残した数々のピアノ作品の中から、特に代表的で聴きごたえのある名曲をご紹介します♪
今回ご紹介するのは、以下の5曲です。
- 亡き王女のためのパヴァーヌ
- 水の戯れ
- ソナチネ
- 夜のガスパール
- クープランの墓
亡き王女のためのパヴァーヌ
ラヴェルが、1899年24歳の頃に作曲した、彼のピアノ作品の中では最も有名と言われる作品です。
曲のタイトルにもなっている「パヴァーヌ」とは、16世紀〜17世紀にヨーロッパの宮廷で行われていた舞踏のことです。
1910年には、この曲の管弦楽曲もラヴェル自身が編曲しています。



美しい旋律がゆったりと流れていく非常に素敵な曲です。難易度も高くないので、中級者であれば演奏可能です♪
水の戯れ
ラヴェルが、パリ音楽院在学中の1901年26歳の頃に作曲したピアノ曲です。
実はこの曲、サン=サーンスに「全くの不協和音」と酷評されてしまった曲でもあります。(悲しい;;)
ですが、現代ではラヴェルの才能が本格的に開花した作品として高く評価されており、コンクールなどでもよく演奏される人気曲となっています。



まさに水の様子をうまく表している素晴らしい楽曲です!
ソナチネ
1903年から1905年にかけてラヴェルが作曲したピアノ曲。
とある雑誌のコンクールのために書かれた曲ですが、この時入選したのはラヴェルただ一人だけでした。
ラヴェルの名前を広めた1曲でもある名曲です♪



第1楽章の美しい旋律が本当に心に染み渡るんです。ぜひ一度は聞いてみてほしいです^^
鏡
1905年、ラヴェルが30歳の頃に作曲されたこの作品は、「蛾」「悲しい鳥たち」「海原の小舟」「道化師の朝の歌」「鐘の谷」の5曲から成る組曲です。
この5曲のうち、第4曲の「道化師の朝の歌」は単独で演奏される機会が多い有名曲です。
「道化師の朝の歌」は、ラヴェルの母の故郷スペインに由来するリズムやギター模倣が随所に見られます。



ラヴェルの音楽の色彩の豊かさや、さまざまな高度なテクニックが見られるお得感満載の曲です♪
夜のガスパール
1908年、ラヴェルが33歳の頃に作曲されたピアノ組曲です。
ベルトランの64篇から成る詩集の中から、「オンディーヌ」、「スカルボ」、「絞首台」の3篇をラヴェルがピアノ曲にしました。
開始楽章と終楽章の調性が一致せず、各楽章に詩的な題名がある点はロマン派的。
一方で、和声や旋法には印象主義の特徴が見られる面白い曲です。
音楽的知性と感性が融合した、ラヴェル初期のピアノ曲の傑作と言われています♪



「スカルボ」は、ピアノ曲の中でも難易度が非常に高く且つ弾きにくいので、実はレパートリーに取り入れているピアニストは多くないのです。
クープランの墓
ラヴェルが、1914年から1917年にかけて作曲したピアノ組曲です。
「プレリュード(前奏曲)」、「フーガ」、「フォルラーヌ」、「リゴドン」、「メヌエット」、「トッカータ」の6曲から成る組曲で、第一次世界大戦で戦死した故人への想いが楽曲になっています。



特に、トッカータは圧巻!高度なテクニックが要求される高難度の曲です。
バレエ音楽
続いては、ラヴェルのバレエ音楽です!
「ダフニスとクロエ」「ラ・ヴァルス」などの有名なバレエ音楽もありますが、今回はラヴェルのバレエ音楽の中で最も有名な「ボレロ」をご紹介しますね。
ボレロ
1928年、ラヴェルが53歳の頃に作曲した、彼の作品の中で最も有名な楽曲です。
この曲は、バレエの世界に留まらず、CMや映画やTV番組など・・・さまざまなところで使用されたり演奏されているので、一度はどこかで耳にしたことがあると思います♪
なんと言ってもこの曲の特徴は、スネアドラムが最初からずっと同じテンポで演奏されていること。
段々と、リズムを刻む楽器が増えていくという面白い構成になっています♪



意外にラヴェルが作曲者であることや、バレエ音楽であることをみなさん知らなかったのではないでしょうか^^この機会にぜひ改めて聞いてみてほしい名曲です!
ピアノ協奏曲
続いては、ラヴェルのピアノ協奏曲をご紹介します!
ピアノ協奏曲 ト長調
ラヴェルが、1929年~1931年にかけて作曲したピアノ協奏曲。
ラヴェルが残したピアノ協奏曲は意外にもわずか2曲で、本作と「左手のためのピアノ協奏曲」のみです。
この「ピアノ協奏曲 ト長調」は、ラヴェルの死の6年前に書かれた作品で、ラヴェルの母の故郷であるバスク地方の民謡をはじめ、スペイン音楽やジャズの語法など、さまざまな要素が織り込まれています。



近代的な技法が際立つ一方で、ピアノとオーケストラの明確な役割分担や対話が堪能できる、協奏曲らしい魅力も備えた名曲です♪
管弦楽
「管弦楽の魔術師」とも言われたラヴェルの管弦楽作品を、最後にご紹介します!
今回は、「スペイン狂詩曲」をご紹介しますね。
スペイン狂詩曲
「夜への前奏曲」「マラゲーニャ」「ハバネラ」「祭り」の4曲から成る、管弦楽のための狂詩曲です。
第3曲「ハバネラ」は1895年に2台ピアノ用として作曲・初演されており、他の3曲よりも早く書かれた作品です。
ラヴェルはその後、1907〜1908年にかけて残りの3曲を2台ピアノ用に作曲し、「ハバネラ」を加えてオーケストレーションを施し、4曲構成の組曲としたんです。
母が歌っていた民謡をはじめ、スペインの伝統音楽の影響が色濃く表れており、スペイン的な要素を色濃く反映した作品の一つです。



鮮やかなオーケストレーションとスペインの情熱的なリズムが融合した、色彩豊かな音の旅が楽しめる一曲です♪
まとめ


今回は「作曲家や楽曲についてより深く知ろうシリーズ」第4弾として、モーリス・ラヴェルを取り上げましたが、いかがでしたでしょうか?
緻密で洗練された音の構築、異文化や過去の音楽への敬意、そして独自の感性によって、20世紀音楽に新たな地平を切り拓いたラヴェル。
彼の作品には、理性と詩情、技巧と情感が見事に融合し、聴くたびに新たな発見があります。
その多彩な世界に触れることで、きっとラヴェルという人物の奥深さや、音楽に込められた想いが感じられるはずです。
ぜひ、ラヴェルの音楽に耳を傾け、その魅力をじっくり味わってみてくださいね♪
次回は、どんな作曲家が登場するでしょうか?
楽しみにお待ちいただけると嬉しいです!
最後までお読みいただき、ありがとうございました^^