趣味でピアノを楽しむ皆さんへ送る「作曲家や楽曲についてより深く知ろうシリーズ」の第3弾です♪


趣味でクラシックピアノを弾いていく上で、作曲家や楽曲について今一度確認して、演奏の表現力向上や楽譜を読み解く力を付けよう!という当ブログのシリーズです♪
今回は、「ピアノの魔術師」フランツ・リストについて取り上げます♪
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アガサ
このブログの運営者及び管理人
3歳からピアノを始め、クラシック音楽歴は30年以上。結婚・出産を経て育児の合間にピアノを再開し、念願のグランドピアノも迎えました。
現在はピアノ教室向けのグラフィックデザイナーとして、全国の先生方をサポートしています。
ピアノとクラシックをこよなく愛する主婦が、音楽やピアノにまつわる情報を気ままに発信中です♪
- 趣味でクラシックピアノを楽しんでいるが、作曲家の背景や人生についてもっと知りたい方
- リストの作品を演奏する際に、曲の深い意味や作曲者の想いを理解したい方
リストの簡単年表

では、リストの生涯を年表にしましたので見てみましょう♪
以下の年表は、大まかな事柄のみを8個のポイントに絞り記載しています。
ハンガリー西部ライディングに生まれる

父はエステルハージ家に仕える音楽家。幼少期から音楽の才能を示し、9歳で公開演奏デビュー。
ウィーンで演奏、ベートーヴェンに称賛される

ウィーンでチェルニーやサリエリに師事。演奏を聴いたベートーヴェンが称賛したという逸話が残る。
父の死と精神的危機

父を病で失い、音楽活動を一時中断。宗教や文学に傾倒し、人生の意味を模索する時期を迎える。
パリで文芸界と交流、多くの女性との関係

ショパン、サンド、ベルリオーズらと交友。マリー・ダグー伯爵夫人との恋愛関係が始まり、のちに同棲。
「ピアノの魔術師」としてヨーロッパ中を演奏旅行

超絶技巧の演奏で一世を風靡。ハンガリーやイタリア、ロシアなど各地で熱狂的支持を集める。
ヴァイマル宮廷楽長に就任、作曲・教育活動に注力

演奏活動を縮小し、作曲と指導に専念。リヒャルト・ワーグナーらを支援し、後進の育成にも尽力。。
「三位一体の生活」ヴァイマル・ローマ・ブダペストを巡る

信仰各地で教えながら、ハンガリー音楽教育の礎を築く。高弟にバルトークやドホナーニらが続く。
バイロイト音楽祭で体調を崩し死去

娘コジマの主宰するバイロイト音楽祭に出席中に肺炎を患い、同地で死去。波乱と栄光に満ちた生涯を閉じた。
いかがでしょうか。
フランツ・リストは「ピアノの魔術師」として19世紀ヨーロッパを熱狂させた伝説的な存在ですが、その生涯は華やかさの裏に、常に内面の葛藤と精神的探求がありました。
早くから才能を開花させ、ベートーヴェンにも称賛された神童は、やがて超絶技巧とカリスマ性を武器に演奏旅行を重ね、名声を築いていきます。
一方で、父の死や幾多の恋愛、宗教との出会いを経て、次第に内面的な世界へと傾き、ヴァイマルやローマでは作曲・教育・宗教音楽に力を注ぎました。
派手な外見や逸話に注目が集まりがちですが、リストの本質はむしろ、孤独と信仰、芸術に対する深い献身にあります。
彼の作品に触れるときには、その華麗さの奥にある精神性や人生の重みを感じながら、音に込められたメッセージを汲み取っていただければと思います。

名前はよく聞くけど、リストってただの“すごいピアニスト”ってイメージしかなかったかも。



でしょ?でも実は、派手な外見や名声の裏に、すごく繊細で複雑な内面を持った人だったんだよ。



気になる〜!どんな人だったのか、もっと深掘りしてみたい!



じゃあ次は「リストの人物像」に迫ってみるよ!
リストのについて描かれているおすすめの本です♪
より深くリストの人生を知りたい!という場合はぜひご覧ください^^
全音から出ている、人気の作曲家シリーズで読みやすいです!
ショパンの芸術と生涯を、リストが自ら書き下ろした傑作本!


リストの人物像


さて、リストは上述の年表の通り、1886年に74歳でその生涯を終えました。
同時代にはシューマンやブラームスといった堅実な作曲家たちもいましたが、リストはあくまで革新性を追求し、演奏・作曲・教育のすべての面で19世紀音楽界に大きな影響を与えました。
「ピアノの魔術師」と呼ばれる超絶技巧の演奏だけでなく、交響詩の創始者としても知られています。
多才で情熱的なリストですが、皆さんはどのような印象をお持ちでしょうか?
以下で、見ていきましょう♪
性格
リストは、きわめて社交的で情熱的な性格の持ち主だったと伝えられています。
裕福な家庭に生まれ、父親は音楽にも造詣が深く、幼い頃からリストの才能を見抜いて支援しました。
6歳でピアノを始め、9歳で演奏会デビュー。神童として注目され、早くからウィーンやパリで音楽教育を受けました。
その類まれな演奏技術と華やかな容姿、カリスマ的な存在感は、19世紀ヨーロッパの音楽界において絶大な人気を誇り、いわゆる「リスト熱(リストマニア)」を巻き起こしました。
今で言う「リスト推し」の方が、たくさんいたということですね♪(笑)
表向きは大胆で自信家に見える一方で、内面には宗教的な思索や芸術への深い探究心があり、年齢を重ねるごとに精神的な成熟も増していきました。
人生の後半にはカトリック信仰に傾倒し、聖職者となったことからも、そうした側面がうかがえます。
奔放な恋愛関係でも知られていますが、音楽仲間や弟子たちに対しては非常に面倒見がよく、後進の指導にも力を注ぎました。
ワーグナーやブルックナーなど、後の大作曲家たちを支援した姿勢からは、寛大で情熱的な人間性が感じられます。
また、リストは型にとらわれず、常に新しい表現を追求する開拓者でもありました。
交響詩という新しいジャンルを創出し、和声や構造の面でも革新的な試みに挑戦し続けました。
その革新性と個性、そして情熱的な音楽は、リスト自身の自由な精神と人間的なスケールの大きさを反映していると言えるでしょう。
交友関係
リストはその生涯を通じて、非常に広範かつ多彩な人間関係を築いた人物でした。
社交的な性格と高い名声を背景に、同時代の多くの音楽家と密接な交流を持っています。
中でも最も重要な人物の一人が、リヒャルト・ワーグナーです。
リストはワーグナーの才能にいち早く注目し、彼の作品の演奏会を主催するなど積極的に支援しました。
ワーグナーが政治的亡命を余儀なくされた際にも経済的援助を行い、その後には娘コジマをワーグナーに嫁がせるなど、家族ぐるみの関係となります。
一方で、リストはショパンとも若い頃から親交がありました。
パリ時代には共に音楽界をリードする存在でありながら、ショパンが次第に内向的な活動に傾くのに対し、リストは演奏旅行などで外向的な道を選びました。両者の性格や音楽観の違いから、晩年にはやや距離ができたとも言われています。
また、リストはベルリオーズやシューマン、クララ・シューマンとも面識があり、特にベルリオーズとは「交響詩」の先駆者として互いに影響を与え合いました。
シューマンとは必ずしも深い関係には至りませんでしたが、彼の批評活動には一定の敬意を抱いていたとされています。
教育者としてもリストは卓越しており、ワイマール、ローマ、ブダペストなどで多くの弟子を育てました。
ハンス・フォン・ビューローやエミール・ザウアー、アレクサンダー・ジロティ、カール・タウジヒといった弟子たちは、それぞれ後に名演奏家・教育者として活躍し、リストの遺産を引き継いでいきます。
さらに、リストは後進の作曲家に対しても寛容で、スメタナやグリーグなど新しい才能を発掘し、機会を与えることにも力を注いでいました。
そうした支援はしばしば無償で行われ、リストの広い懐と深い芸術的寛容さを物語っています。
晩年は宗教的な傾倒から人付き合いを選ぶようになったものの、その名声と人格から、多くの音楽家たちが彼を慕い続けました。
リストの音楽人生は、まさに人との出会いと影響の中で花開いたものであり、彼自身もまた多くの人々にとってかけがえのない存在であり続けたのです。



リストって、孤高の超絶技巧ピアニストってイメージあったけど、実はすごく面倒見のいい人だったんだね〜。



そうなの!後進の育成にも力を注いでて、支援した作曲家も本当にたくさんいたんだよ。



なんだか、華やかな演奏の裏にある人間味にぐっとくるね・・・。



それじゃあ次は、そんなリストがどんな名曲を残したのか、じっくり紹介していくね♪
リストの名曲


次に、必ず1度は聞いておくべきリストの名曲をご紹介します!
リストの作品には、同じ曲に複数のバージョンが存在するものが少なくありません。
たとえば「第1稿」「第2稿」といったように、本人による改訂を経た別稿が残されているケースが多く見られます。
そうした改訂版を含めて数えると、現存するリストの作品はなんと1400曲以上にものぼります。
さらに、現在では紛失してしまった曲や、構想の断片、未完成のまま残された作品まで加えると、少なくとも400曲以上が加わるといわれています。(恐ろしい。)
このように、バージョン違いや未発表の資料まで考慮すると、リストが生涯で実際にどれだけの曲を書いたのかを正確に数えることは、ほとんど不可能と言ってよいかもしれません。
と言うことで、今回は以下の4つに分けましたが、リストの有名曲はピアノ曲が多いのでピアノ曲の割合多めです。
この他にも、有名作品はありますが、今回は上記の4つの種類の名曲をご紹介していきますね。
ピアノ曲
ここでは、リストが残した数々のピアノ作品の中から、特に代表的で聴きごたえのある名曲をご紹介します♪
今回ご紹介するのは、以下の8曲です。(多いですが、これでも厳選しました;;)
※作品集の名前をリストに掲載しています
- 超絶技巧練習曲
- パガニーニ大練習曲集
- 3つの演奏会用練習曲
- コンソレーション
- ハンガリー狂詩曲
- 愛の夢
- メフィスト・ワルツ
- 巡礼の年
超絶技巧練習曲
1826年、リストが15歳の頃に初稿が出版され、その後1852年 41歳の頃に第3稿が出版された、ピアノのための12の練習曲です。
すべて異なる調で書かれており、原題は「卓抜した演奏のための練習曲集」というほど超絶技巧が満載の練習曲集。
上のYouTubeは、その中の第4番「マゼッパ」です。
「マゼッパ」は、1840年に改定されオーケストラのために改作した同名の交響詩もあるほど、特に有名。



恐ろしいほどの難易度です。「ピアノの魔術師」と呼ばれるほどのテクニックを持ったリストだからこそ、作ることができた名曲です。この超絶技巧練習曲の中には、第4番の「マゼッパ」意外にも素晴らしい曲がたくさんありますのでぜひ他の練習曲も聞いてみてください^^
パガニーニ大練習曲集
ヴァイオリンの名手、パガニーニ(1782-1840)の演奏を初めて聞いた21歳のリストが、「(自分は)ピアノのパガニーニになる!」と叫んだという有名な逸話があります。
そして、1838~1839年にかけて「パガニーニによる超絶技巧練習曲集」、さらにこれに1851年に大幅に手を加え、「パガニーニによる大練習曲」と名付けて改訂版を出版しました。
中でも、有名なのはYouTubeの動画にもある、第3曲 「ラ・カンパネラ」です。
この曲は、ピアノ経験者でなくても知っているであろう超有名曲ですね♪



ピアノの高音による鐘の音色が特徴的な、スケールの大きい曲で何度聴いても楽しめる名曲です。
3つの演奏会用練習曲
1845年から1848年頃に作曲された、前述した二つの練習曲集と違いサロン的な趣を持つ練習曲集です。
YouTubeは、その中の、第3番 変ニ長調「ため息」です。
甘美な詩情にあふれた魅力あふれる曲なので、演奏会などでも演奏するピアニストが非常に多い有名曲です。



素早く手が入れ替わる技巧的にもこれまた非常に難しい作品ですが、ドラマティックな音色が素敵なのでピアノ経験者は1度は弾きたい!と思う憧れの曲でもありますね♪
コンソレーション(慰め)
リストが、1849年から1850年にかけて作曲した、ピアノ作品集です。
第1番から第6番までありますが、中でも有名なのはYouTubeの動画の通り、第3番 変ニ長調です。
この曲集は、前述した超絶技巧等の曲集に比べて、技巧的には易しく、かつシンプル。
19世紀に広く愛された小品集の一つで、ショパンの夜想曲からアイデアを得て書いたとも言われています。



叙情的なメロディーが特徴的で、愛らしさに満ちた魅力的な作品です♪
ハンガリー狂詩曲
全19曲存在するピアノ作品集です。
特に有名なのはYouTubeの、第2番 嬰ハ短調です。
カデンツァを挿入する箇所があるのですが、リスト自身も複数のカデンツァを残していると言われています。
ピアノの巨匠、ホロヴィッツがアレンジして演奏していたことでも知られる有名曲です♪



「トムとジェリー」でも使用された曲ですのでご存じの方も多いのではないでしょうか^^
愛の夢
元々、リストが歌曲として作曲した3つの曲を、1850年にピアノ独奏版に編曲した、3曲から成るピアノ曲です。
有名なのは、YouTubeの第3番 変イ長調ですね♪
一般的にも非常によく知られた名曲で、涙を誘う非常に美しい名曲です。



元々の歌曲の第3番は、「おお、愛しうる限り愛せ」と言う歌詞から始まりますが、これは恋愛のお話ではなく、「あなたがお墓の前で嘆き悲しむその時は来る。だから、愛しうる限り愛しなさい。自分に心を開く者がいれば、その者の為に尽くし、どんな時も悲しませてはならない。」と言った人間愛の内容の詩になっているんです♪
メフィスト・ワルツ
「メフィスト・ワルツ」と名付けられた作品は、4曲存在します。
中でもYouTubeの、第1番「村の居酒屋での踊り」は、リストが1856から1861年頃に描かれたと言われている非常に有名な曲です♪
管弦楽曲版や、4手ピアノ(連弾)版もリストによって作られています。



ピアノの技巧がたっぷり詰め込まれた、リストを代表する難曲とも言われています。(リスト、難曲作りすぎ問題。笑)後半部分は、まさに「狂喜乱舞」と言っても過言ではない、凄まじい迫力です。
巡礼の年
「第1年:スイス」「第2年:イタリア」「ヴェネツィアとナポリ(第2年補遺)」「第3年」の4集からなる、リストのピアノ曲集です。
リストが、20代から60代までに作曲したものを集めたもので、リスト自身が訪れた地の印象や経験、目にしたものを書きとめたと言われています。
YouTubeは、「第2年:イタリア」の中の第7曲「ダンテを読んで-ソナタ風幻想曲」です。
規模の大きな作品で、圧倒的な迫力が感じられるため演奏会で取り上げられることも多い名曲。





「巡礼の年」は、掲載するか迷ったのですが・・・個人的に大好きなので入れさせてもらいました。少し玄人向けかもしれませんが、その中でも「ダンテを読んで-ソナタ風幻想曲」と「エステ荘の噴水」は、ぜひ聴いてみてほしい曲です。
交響詩
続いては、リストの交響詩です♪
リストは、13曲の交響詩を作曲していますが、「前奏曲」以外が演奏されることは現代ではほとんどありませんので、今回は「前奏曲」のみご紹介しますね。
前奏曲
1854年、リストが43歳の頃に作られた交響詩です。
「人生は死への前奏曲」というアルフォンス・ド・ラマルティーヌの詩による考えに基づき、リストの人生観が歌い上げられている、リストの交響詩の代表作。



死へと向かう人生の始まりを暗示する主題が印象的で、ラストはこの主題を変形したフィナーレで圧巻です♪
ピアノ協奏曲
続いては、リストのピアノ協奏曲をご紹介します。
リストは、ピアニストとして活躍していたのでピアノ作品は非常に多いのですが、ピアノ協奏曲と呼ばれる作品は、実は2曲しか残されていません。
今回はその2曲のうちの、第1番をご紹介します♪
ピアノ協奏曲 第1番 変ホ長調
1830年代から1856年にかけて作曲した、リストのピアノ協奏曲の中で1番有名な曲です。
演奏時間は約20分前後と、ピアノ協奏曲の中では比較的小さめの規模ですが、ふんだんにリストらしい優美なメロディーが散りばめられていて素晴らしい曲です。
現代でも、頻繁に演奏される、リストを代表する傑作とも言えます♪



第4楽章では、それまでに登場したメロディーが次から次へと登場してきて非常に聞き応えがあります。ラストのフィナーレは、圧巻ですよ!
編曲
リストは、実は歌曲や管弦楽曲のピアノ編曲も数多く世に送り出しました。
(と言っても、上記で説明した名曲の数々も他の作品から影響を受けて書かれたものが多いので、リストが編曲が得意で多数あると言っても、もう皆さん驚きませんよね^^笑)
今回はリストが編曲をした中で、特に有名な「献呈(シューマン)」をご紹介します!
献呈(シューマン)
1848年、リストが37歳の頃にロベルト・シューマンの歌曲集『ミルテの花』op.25の第1曲を、リストがピアノ独奏用に編曲しました。
この曲は、シューマンが最愛の恋人クララと結婚する前日に、「愛する花嫁へ」とメッセージを記しクララに捧げた、とってもロマンチックな曲です。
愛に溢れた優美なシューマンのメロディーに、リストのピアノによる華やかな装飾が加えられ、ピアノ曲としても非常に有名になりました。



コンサートやリサイタルのアンコールでよく演奏される曲でもあります。私は絶対この曲を聴くと、涙腺が刺激され涙が出る病気です。(笑)
本当に素晴らしい曲ですので、1度は聞いてほしい!
まとめ


今回は「作曲家や楽曲についてより深く知ろうシリーズ」第3弾として、フランツ・リストを取り上げましたが、いかがでしたでしょうか?
超絶技巧のピアニストとして名を馳せたリストですが、その華やかな表舞台の裏には、深い信仰心や芸術への献身、そして人への思いやりに満ちた人生がありました。
作曲家としても演奏家としても、時代の最先端を駆け抜けながら、若い才能を支援し、音楽の未来を切り拓いていったリスト。
その幅広い作品群には、彼の内面の多面性や情熱、精神性が色濃く表れています。
ぜひこの機会に、リストの音楽にじっくりと耳を傾けてみてください♪
次回はどんな作曲家が登場するでしょうか?
どうぞお楽しみに!
最後までご覧いただき、ありがとうございました^^